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市立函館博物館の大矢です。 これまでアイヌ文化における「美」というと、「アイヌ衣服の文様美」や「アイヌ民具の造形美」などがよくとりあげられてきました。そこで今回はちょっと目線を変えて、国指定名勝「ピリカノカ」について紹介したいと思います。 まず文化財保護法上の国指定「名勝」とは、「庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの」【文化財保護法第2条4項】のうち特に「重要なもの」【同法第109条】として指定されたものです(ピリカノカに該当する部分のみ抜粋しています)。 そしてピリカノカは、「アイヌのユカラに謡われた物語・伝承の舞台をはじめ、カムイ(神)に対する祈りの場であるチノミシリの伝承地、アイヌ語により命名された独特の地形から成る土地は、いずれも良好な自然の風致景観を成し、アイヌ語で「ピリカノカ」(美しい・形)と総称するに相応しい景勝地群である」【文化庁国指定文化財等データベースより】として、平成21年から26年の間に10件が指定されました。 ①九度山(クトゥンヌプリ) 指定年月日:2009/7/23 所在地:名寄市 景観:名寄市内から望める673.6mの山で、自然探訪など四季を通じて多くの市民に活用されています。 伝承:アイヌ語で「岩崖がある山」の意。また別名チノミシリ(我々がまつる山)とも呼ばれ、アイヌの人たちにとって日々の祈りの対象であり、狩猟の時の目印の山として大切な存在でした。 ②黄金山(ピンネタイオルシペ) 指定年月日:2009/7/23 所在地:石狩市 景観:石狩市浜益区の象徴ともいえる標高739.1メートルの山で、その姿から「黄金富士」「浜益富士」とも呼ばれています。 伝承:アイヌ語で「樹叢の平原の中にそびえる雄山」の意。ユカラに少年英雄として登場するポイヤウンペの拠点として伝承されています。 ③神威岬(カムイエトゥ) 指定年月日:2010/2/22 所在地:枝幸町・浜頓別町 景観:北オホーツク道立自然公園内の、オホーツク海に突き出した岬。冬期には流氷が接岸し、周辺では豊富な高山植物を見ることができます。 伝承:アイヌ語で「神の岬・突端」の意。カムイノホリ(神の山)、カムイノミウシ(神を祭るところ)などの地名が点在しており、アイヌの人たちは神聖な場所と考えていました。 ④襟裳岬(オンネエンルム) 指定年月日:2010/8/5 所在地:えりも町 景観:日高山脈がしだいに標高を下げ、そのまま太平洋に沈んでいく岬。遠く2km沖まで岩礁地平等が続く光景が見られます。 伝承:アイヌ語で「大きい岬」の意。岩礁の名はアイヌ語に由来し、地域のアイヌ文化における象徴的な存在です。 ⑤瞰望岩(インカルシ) 指定年月日:2011/2/7 所在地:遠軽町 景観:地上からほぼ垂直にそびえる、高さ約78メートルの一枚岩。えんがるの町名の由来でもあり、北海道自然百選にも選ばれています。 伝承:アイヌ語で「見張りするところ」の意。その昔古戦場であり、また儀礼の行われた厳粛な場所とされています。 ⑥カムイチャシ 指定年月日:2011/2/7 所在地:豊浦町 景観:噴火湾に突き出た断崖で、周囲は史跡公園として整備されています。 伝承:アイヌ語で「神の砦・館」の意。ほぼ垂直の断崖となっていて、人間の近寄りがたい場所としての意味もあったと考えられています。 ⑦絵鞆半島外海岸 指定年月日:2012/1/24 所在地:室蘭市 景観:10km以上にわたり断崖が続く、雄大な風景を見ることができます。 伝承:ハルカラモイ(ハルカルモイ、食料とる入江)、増市浜(マスイチセ、海猫の家)、地球岬(ポロチケウェ、親である断崖)、トッカリショ浜(トゥカリショ、アザラシ岩)の4カ所で構成され、アイヌ語地名を由来とする地形が残されています。 ⑧十勝幌尻岳(ポロシリ) 指定年月日:2012/9/19 所在地:帯広市・中札内村 景観:帯広市と中札内村の境にある標高1846mの山で、その雄大な姿はもちろん、動植物が多く生息する豊かな自然で、十勝の象徴的な存在となっています。 伝承:アイヌ語で「大きい山」の意。神々が遊んだ山であると伝えられ、アイヌの人たちから神聖な山として崇められてきました。十勝平野から日高山脈を眺めたとき、ひときわ大きくそびえて見えます。 ⑨幌尻岳(ポロシリ) 指定年月日:2013/10/17 所在地:新冠町・平取町 景観:新冠町と平取町の境にある標高2053mの山で、日高山脈襟裳国定公園の最高峰です。北海道固有の植物が豊かで、エゾナキウサギの棲息地としても知られています。 伝承:アイヌ語で「大きい山」の意。神々が住む聖なる山として知られ、山頂近くの「七つ沼カール」(周氷河地形)には、海の生物の伝承も残されています。 ⑩オキクルミのチャシ及びムイノカ 指定年月日:2014/3/18 所在地:平取町 景観:平取町の額平川流域にある、天然林に覆われた岩山や崖面です。オキクルミのチャシは、額平川左岸に続くデコボコした丘の端にある突き出た岩山で、ムイノカは、額平川下流にある半月状に欠けた崖面です。 伝承:オキクルミのチャシは、アイヌの物語に登場する神であるオキクルミの住まいとして崇められた場所と言い伝えられています。 また、ムイノカ(箕の形)は、オキクルミの妹(妻のことを指す)が天上に戻るときに置いていった箕(農具)と言い伝えられています。 以上簡単に紹介しましたが、いずれも北海道の雄大な自然と、それらにはぐくまれたアイヌ文化を肌で感じることのできるすばらしい場所です。これからの行楽シーズン、ちょっと遠出してアイヌ文化のピリカノカ(美しい形)にふれてみてはいかがでしょう。 ※各資産の情報については、北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課ならびに各所在地自治体のHPを参考に作成しました。 ※掲載写真の無断転載を禁止します。 ※アイヌ語で半角片仮名となっているのは、母音が付かない子音の発音表記です。(例:ピリカ=pirka)
by dounan-museum
| 2015-09-16 23:08
| テーマ「道南の美術を知る」
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