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市立函館博物館の佐藤理夫です。 今日は絵になる鳥の話をします。 少しの間、お付き合いください。 ■蠣崎波響が描いた「桜花と目白」 当館には蠣崎波響の描いた作品が数多く収蔵されています。蠣崎波響については、聞いたことがあると思いますが、「夷酋列像」を描いた人物として有名です(現在、北海道博物館で開館記念特別展「夷酋列像 蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」を開催中)。 上記の絵も彼が描いた作品です。絵の良し悪しについて論評する才は、私に備わっていないので、そこに描かれている鳥について気付いたことをお話したいと思います。この絵の別称は「山桜と鶯」となっています。 この題名を聞くと思い浮かぶのが「梅に鶯」です。皆さんならどうでしょう。そう思うのは私だけでしょうか? この「梅に鶯」は「取り合わせのよいもの、よく似合って調和しているもの」といわれる、よく聞く〈ことわざ〉ですし、画題としてもよく描かれます。 この題名、鳥類観察を生業か、趣味にしている人からすると、「梅に鶯(ウグイス)」ではなく、「梅に目白(メジロ)」ではないかと指摘されることが多い題材です。実際、描かれている鳥を見ると、どう見てもメジロにしか見えないものもあるのは事実です。 実際、ウグイスの生態を考えると、「梅に鶯」あまり結びつかないということでしょう。 ただし、全く関係がないと言えば嘘になります。なぜなら、ウグイスが子育て(繁殖)を始める頃には、ちょうど梅の花が咲く頃と一致するため、梅の花が咲く頃には、ウグイスも〈なわばり〉内に梅があれば止まり木として利用することは、想像に難くないと思われます。 でもこれは、好んで梅を利用する訳ではなく、たまたまそこに梅があったので利用する程度のことでしょう。 ではメジロならどうでしょうか?メジロは花の蜜を好みますから、梅の花の蜜を吸うために、好んで梅の木に集まるでしょう。 さて、ウグイスもメジロも、本州以南の日本国内では留鳥ですが、北海道では夏鳥となります。 実は、メジロは群れながら、サクラの開花に合わせて日本列島を北上して北海道に渡ってきます。 メジロが渡来し北上する一時期は、藪に隠れて行動する〈ウグイス〉と比較して、観察しやすい鳥です。それは群れをなして木々を渡っていくからです。桜の咲く時期を同じくして、「チィー、チィー」と群れをなして、桜に群がり、渡りながら北上して来るのです。 ただ、この鳥が昔から北海道にいたわけではありません。北海道で繁殖が確認されたのは明治以降ですから、それ以前にメジロが入ってきたようですし、現在は道北まで北上しているようです。これはサクラなどの植林の広がりも影響しているのではと思います。今は道南で普通に繁殖していますが、以前から普通にしていたことにではないのです。 では本題の「桜花の目白」話を戻したいと思います。この絵を描いた時期がいつか、ということになります。この絵を波響はどこで描いたか?、メジロを見たことがあるのか?、という疑問に突き当たります。 目に周りはメジロのように白いのですが、翼に白い1本の横縞があるのが気になります。 これはウグイスにもメジロにも無い特徴です。ですから少なくとも、メジロを見て描いたのではなく、さらには、ウグイスを見て描いたわけではない気がします。 ■松前波藍が描いた「梅に鶯」 次に、波響の高弟の波藍の「梅に鶯」との題が付く作品ですが、これはどう見てもウグイスではなく、シジュウカラです。ウグイスとしたのは、鳥の分からない人物が、梅に鳥だからという単純な理由でウグイスとしたとしか思えません。 それだけ、梅に鶯を描いた作者がウグイスを知っていたかは疑問ですし、ウグイスを描こうとしたかは疑問です。 もしかしたら、題名を付けた人物が機械的に「梅に鶯」という題をを付けてしまったのかもしれません。参考までに、当館に収蔵しているシジュウカラの剥製を載せてみました。この剥製を見て、何か気づくことはないでしょうか? 実は、先ほどまで述べてきた「桜花の目白」の中で描かれていた鳥の翼を見ると、このシジュウカラのように白い横縞が描かれています。これはどういうことでしょうか? ここでの謎解きはここまでとします。読者の方々には、納得いかない、中途半端な尻切れトンボになった感がありますが、絵を見ながらこんな事を想像することも楽しいのではないかと、一つのご愛敬としてご理解いただければ幸いです。 最後までお付き合いいただきありがとうございました。
by dounan-museum
| 2015-09-20 09:00
| テーマ「道南の美術を知る」
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