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市立函館博物館の佐藤です。 身近な乾燥剤を題材に,原料となる鉱物について紹介します。 乾燥剤と言えば皆さんは何を思い浮かべますか? 代表的なのは,石灰石CaCO3―石灰岩というのが正式なのですが,石灰岩だと大きいイメージなので,あえて石灰石としました―を原料とした「石灰乾燥剤」ですが,「シリカゲル」というのも目にするでしょう。 石灰石は,「味付けのり」などに入っており,「シリカゲル」は米菓などのお菓子類に入っています。この他にも「生菓子」などには,「脱酸素剤」,さらには,シリカゲルにエチルアルコールを吸着させて,揮発させることで,乾燥の他,カビの発生を防ぐもあります。 ここでは,商品の宣伝をしたい訳ではないので,商品紹介はここまでにします。 当館では,昨年までの数年間「石灰石」の講座を行っていました。 これは、身近にあり,普通に使われたいるにもかかわらず,あまり意識されていない。でもなくてはならない乾燥剤を教材に利用し,鉱物学の入門としての鉱物について親しみをもってもらいたいという思いで始めたものです。 まず質問です。使い終わったら乾燥剤を皆さんはどのように処理していますか? 「石灰乾燥剤」なら乾燥剤を包む袋をよく見ると,以前なら「たべられません」とだけは表示してありました。これでは,どう処理すれば良いのか分かりません。今なら,小さい字で「使用後は各自治体の区分に従って廃棄してください。」と記載されています。「禁水」小さい字で「水気のあるところに捨てにで下さい。(発熱することがあります。)」と書いてあります。これは,水をかけると発熱するといっているのです。けれども,乾燥剤は,そもそも水を吸う訳ですから,大丈夫かなと思ってしまいます。 活性炭入りの「生石灰」(黒い結晶は活性炭) 実は,「石灰乾燥剤」は,「生石灰」といわれる,〈白っぽい塊〉の「生きているように発熱する結晶状の石灰」,つまり「酸化カルシウム(CaO)」が袋に入っています。それが,「消石灰」という〈発熱を終えた粉状の石灰〉,つまり「水酸化カルシウムCa(OH)2」に変化します。どういうことかというと,「生石灰」が袋内の湿気(水分)を吸収発熱することで化学変化を起こし,その結果,ザラメ状の〈白っぽい塊〉は壊れ,〈白い粉〉に変化します。完全に〈乾燥剤の役割を終えた〉状態だと,石灰乾燥剤は,〈パンパンに膨れた〉状態になっており,手で触るとザラメ状の〈白っぽい塊〉は残っていません。そうなると水分は全く吸収出来ません。逆に,ザラメ状の〈白っぽい塊〉が残っているなら,まだ「生石灰」成分が残っているので,乾燥剤としてまだ使えますし,そのママ,ゴミに捨てると,発熱することになりますから,注意が必要です。 ところで,〈乾燥剤の役割を終えた〉状態の〈白い粉〉には,もう一つ用途があります。これは身近なところで見ることが出来ます。何だと思いますか? それは,鳥インフルエンザ対策として使われた消毒剤の〈白い粉〉やライン引き用の〈白い粉〉です。そして,漆喰(しっくい)の〈白い粉〉です。漆喰は,〈白い粉〉に水を加えて作られます。さらに,肥料にも使われますから,それぞれの特性を理解すれば,非常に役に立つ鉱物です。特に,最近は,石灰石から紙の代用品を作っているそうです。 「消石灰」 では,石灰石から「生石灰」を生成するためにはどうしたら良いのでしょう? これは,石灰石(灰色)に熱を加えることで「二酸化炭素CO2」が抜けて〈白い塊〉になります。これが「生石灰」になるのです。 石灰石は,どのように作られるかというと,これは,海の中で,珊瑚や貝などカルシウムが堆積し,二酸化炭素を吸収して固まったモノです。これって何か思い浮かべませんか? 実は,先にも触れました漆喰は,「〈白い粉〉の消石灰」つまり「水酸化カルシウム」に水を加えて作られます。さらにそれが数年経ち,「二酸化炭素」を吸収することで,石のように硬くなります。つまり,もとの石灰石に戻ったことになります。 さらに,セメントは,水に弱い漆喰を改良したものです。 石灰石はセメントの原料ですし,世界第4位の生産量を誇っていますから,日本にとって輸出のできる貴重な資源となっています。道南では,太平洋セメントの北斗市にある峨朗(がろう)鉱山が有名です。 兎に角,石灰石は究極の再生可能な循環型エコ資源と言えます。 もう一つ,石灰石が持つ不思議な性質に気づいたでしょうか? 他の鉱物は石英・斜長石・雲母・角閃石など何種類かの鉱物が混じり合ってできています。たとえば,深成岩の一種である花崗岩は,石英・斜長石・雲母からできています。でも石灰石だけは,「炭酸カルシウム」一種類だけでできています。 さらにもう一つ,石灰石と他の鉱物を見分けるとしたら,どんな方法があるでしょう。石灰石を何度も見ていると他の鉱物と見分けることができるでしょうが,もっと良い方法があります。それは,希塩酸です。石灰石に希塩酸をかけると,ブクブクと泡が出ます。でも,他の鉱物は出ません。希塩酸は,使い方を間違えなければ,危険な液体ではありませんから,チャンスがあれば試してみましょう。 そして,貝殻や珊瑚に希塩酸をかけても,泡がブクブクと出ます。それは,成分が同じモノだからです。 石灰岩(1966年(昭和41) 函館市東山町湯の沢産) 石灰岩(峨朗鉱山産) 以上,いかがだったでしょうか? とりとめもなく,長々と解説してきました。分かりにくかったかもしれませんが,最後までお付き合い頂きありがとうございます。今度また機会がありましたら,「シリカゲル」についてもお話ししたいと思います。
by dounan-museum
| 2016-08-29 16:07
| コラムリレー
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Comments(1)
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