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市立函館博物館の小林です。 市立函館博物館は,8月29日からの休館で展示替えを終えて,今月17日から新収蔵資料展を開催しました。これに併せて,常設展示も部分的に展示替えしました。私が担当する考古資料に関しては,歴史・民俗担当の保科学芸員の提案を受けて,歴史・民族・民俗の資料と合わせて「想像するコーナー」を設けました。今回は,このコーナーの考古資料について,お話します。 このコーナーでは,縄文時代の資料と違う時代の資料を並べて展示することで, 各々の資料の用途などを見学者に考え,想像していただき,縄文時代とは,どの様な時代だったのかについて考えるヒントになればと思い企画しました。 このケースでは,石皿(サイベ沢遺跡出土 約6,000~4,500年前)・擦石(見晴町遺跡出土 約4,500年前)と志苔館跡出土のすり鉢(約600年前),サイベ沢遺跡出土のナイフ(約6,000~4,500年前)と現代の出刃包丁・カッターナイフをセットで展示しています。 石皿・擦石については,敢えて石皿の上に擦石を置いたりせずに擦石の擦り面を見学者に向け,「…ドングリなどをすりつぶしたようだ…」という解説文から,どの様に使ったかを考えるため,すり鉢を並べました。すり鉢を使う時に,セットで使う道具があるか。あるとすれば,どんな使い方をするか。そんなことを考えながら見て頂けると,ヒントになるのではと思います。さらに,この2つの石器の表面をよく見てみると,すり減ってくぼんでいたり,けずれてザラザラしたりスベスベしたり,通常の表面とは違う部分があります。これは使ったことによる使用痕(使われた痕跡)なのですが,この部分に注目してみると,どことどこが使われたのか,どう使われたかが,わかるかもしれません。 また,縄文時代のナイフと,私たちが見慣れた出刃包丁やカッターナイフを見比べてみると,その形は大きく異なります。「ナイフ」と呼ばれるとおり「モノを切る」道具ですが,この縦長のナイフは左右のヘリが刃です。石のかけらのヘリをシカの角などで打ち欠いて刃を作り出しているため,刃の形状が特徴的です。 このケースでは,3種類の石器を展示していますが,じっくり見てみてください。石皿・擦石とナイフでは,表面の様子が全く異なります。この石皿と擦石は,川原や海岸にある石を,ほぼそのまま使用しています。原石から石のかけらを取って,さらに打ち欠いて作られるナイフとの製作過程の違いが,如実に表面に現れています。そういう形の違いに注目して観察してみると,なかなか味わいがあるモノです。 こちらでは,大きさの際立った土器(湯川貝塚出土 約4,000年前)を中央に据えていますが,その右の樽に注目してください。みなさんは,「たが」を御存知ですか?「たがが外れる」とか「たがが緩む」などと言いますが,この樽の上下にある竹で編んだ輪のことです。樽の胴がバラバラにならずに,きちんと容器としての役割を果たせるように堅く締め付けるモノです。そこで,この土器をもう一度見てください。粘土の帯びが3本貼り付けられていますが,土器の資料集などで紹介される場合,これは「タガ状(ジョウ)の貼付帯(ハリツケタイ)」と呼びます。樽の「たが」と形が似ていることから,こう呼ばれますが,敢えて樽と並べてみました。もちろん土器の「タガ」は文様の1つですが,このように特に大きな土器の用途は何なのでしょう。樽と同様に何かを蓄える容器でしょうか。容器だとすると,何を入れていたのでしょう。また,容器ではなく煮炊きに使われていたのでしょうか。だとすると,表面に火で炙られた痕跡は残っているでしょうか。そんなことも考えながらご覧ください。 大きな土器の次は,サイズが非常に小さいミニチュア土器(全て「伊藤コレクション」 女名沢出土 約2,500年前)です。一般的に作られた土器と比べて極端に小さいので,“ミニチュア”土器と呼ばれます。サイズこそ違うものの,その当時,一般的に作られている土器と同じ形に作られ,なかには文様まで同じように付けられている物もあります。その点では,まさに一般的な土器のミニチュアと言えます。このケースで展示している資料は,全て当館の縄文晩期の一大コレクション「伊藤コレクション」から選びました。ですので,「伊藤コレクション」の土器を展示しているケースが側にありますので,是非,そちらと比べて見てください。大きさの違いが実感できると思います。直径や高さが2cm程度の物もあり,本当に小さな土器ですが,どんな目的で作られたのでしょうか。遺跡のどこから,どの様な状態で発掘されたかを手掛かりにして,用途を考察したりしますが,儀礼や儀式,精神文化との関連性で紹介されることが多いのですが,実際はどのように使われたのでしょう。現在の私たちに身近な参考例として,桃の節句に小さな器を並べて飾る「雛道具」と一緒に展示しました。縄文時代の人たちも,特定の時期に並べて使ったのでしょうか。 今回の展示では,説明する文章も,それぞれの資料について細かく,というよりは,一緒に展示している資料との比較など,考える際の参考となるように意識しました。答えが見つかるか,見つからないかは別として,縄文時代に想いを馳せてみませんか。興味を持たれた方は,是非一度ご覧ください。
by dounan-museum
| 2016-09-29 07:00
| コラムリレー
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