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松前城資料館の前田です。 ここで云う「正直台」とは、桶作りで最も重要な道具のことを指し、桶の側板同士の接合面を正確に削るための大きな鉋のことです。また、これとは別に金属加工で基準となる平行や直角度が保障された立体の補助具もこのように呼ばれています。 ご存知の方も、もうしばらくお付き合いください。 この度、町内月島で桶屋をされていた渡辺家から、桶作り道具など生活用具一式点を一括して寄贈されました。そこで、桶作り道具の一部をご紹介します。なお、桶作りについては、現在町内では行われておりません。また、渡邊家での道具の呼称については、三代目がすでに亡くなられて聞き取りも出来ず、二代目の函館での修業先も不明なので、ここでは一般的な呼称を用います。なお、使用方法についてはに動画が数多く紹介されていますので、そちらをご参照願います。 渡辺家は、初代が明治5年生まれで、現在の新潟県三条市から松前に来て、月島で漁師を行っていました。二代目は明治年代生まれで、漁師となりましたが船酔いがひどかったため漁師をあきらめ、函館に出て桶職人の修業に3年ほど行き17歳ごろに松前に戻ってきて以来、桶屋を生業としていました。また、近所の葬儀屋さんから棺桶を頼まれ、その納入をしていましたので、葬儀に必要な品々もこの度の寄贈品に含まれていました。そして、注文に応じて桶作りを行っていましたが、桶屋としての店舗は持ちませんでした。 戦後になり注文が激減し、生活が苦しかったそうですが、三代目は漁師をされるとともに桶作りもされ、寄贈者である奥様が云われるには、これらの製作道具を大切に扱われていたそうです。 それでは、桶作りについてですが、主な工程は、①材料となる玉丸太をつくる⇒②玉丸太から側板を割り取る⇒③側板を荒削りする⇒④側板を調整する⇒⑤側板を仮組する⇒⑥側板を仕上げる⇒⑦底板を作り桶を組み立てる⇒⑧タガをかける⇒⑨面取りなど最後の仕上げをするの順に、そこで使われる道具を見て行きます。 多くの画像を使用してますので、その1として①~④の工程を、別日に、その2として⑤~⑨を紹介したいと思います。 それでは、前半の紹介です。 ①「チョウナ」で丸太の枝はらいや皮剥ぎを行い、「前挽大鋸」で必要な長さに切断し、側板の材料となる玉丸太を作ります。 「チョウナ」(全長63㎝) 「前曳大鋸」(全長85.5㎝) ②玉丸太をナタで割って、側板を作ります。 ・切断した丸太を「大割槌」と「大割包丁」で大割にし、「小割槌」と「小割包丁」で小割にします。 「大割槌」(全長77㎝) 「大割包丁」(全長43㎝) 斧や楔も使われていたようです。 「小割槌」(全長34㎝) 「小割包丁」(全長35㎝) 「作業台」(長辺29㎝) ・「曲がりナタ」を使い、側板に適した湾曲した板を割り取ります。 ・曲がりナタのなかには、日本刀を折ったものも使われていました。 ・割り取りは小口に曲がりナタをあて、「木槌」で叩き割り取ります。 ・この段階で十分に乾燥させます。 「木槌」(全長31㎝) 「曲がりナタ」(全長26.5㎝) 「日本刀の柄」(全長25㎝) 「作業台」(長辺16.5㎝) ③側板を、銑と呼ばれる両手持ちの刃物で荒削りをします。 ・「平銑」は側板の外側面等の切削に、「内丸銑」は側板の内側面の切削に用います。 ・用い方は「削り台」にまたがり、「削り台」端部の突起部分と「胸当て木」の間に側板を挟み「銑」を手前に引き切削します。 ・さらに十分に乾燥させます。 「平銑」(幅51.5㎝) 「内丸銑」(幅45㎝) 「削り台」(全長88.5㎝) 「胸当て木」(幅24.5㎝) ④「内丸カンナ(外側面削り)」や「外丸カンナ(内側面削り)」で、側板に湾曲(アール)をつけます。「カイカタ」という木型に当て外側面のアールを調整し、「正直台」で側板側面の摺合せ面を削ります。 ・桶の大きさによって、側板のアールや、側板外面と接合面との角度が異なるので、 「カイカタ」と呼ばれる木型を当て、正確に削って行きます。 ・「正直台」は、側板を手にもって台鉋に押して削るように使用し、側板同士の接合面を密着させるよう調整して行きます。 この「正直台」の刃は、平銑か正直台専用の銑を使用したと考えられます。 「内丸カンナ(外側面削り)」(全長25.5㎝) 「外丸カンナ(内側面削り)」(全長25.5㎝) 「外丸カンナ・長手柄付き(内側面削り)」(全長36.5㎝) 「カイカタ(二尺三寸 大正七年六月拾七日 桶吉製)」(全長26㎝) 「カイカタ(五寸 大正八年八月■日 桶吉製)」(全長12.6㎝) 「正直台」(全長112.5㎝) 「正直台」(全長101.5㎝) 以上、桶の内外面の調整について説明しましたが、次回は組み立て作業以降に使う道具を紹介することにします。
by dounan-museum
| 2018-01-16 11:09
| コラムリレー
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