カテゴリ
全体 コラムリレー 市立函館博物館 函館市縄文文化交流センター 北海道立函館美術館 函館市北方民族資料館 函館市文学館 五稜郭タワー 函館高田屋嘉兵衛資料館 土方・啄木浪漫館 北海道坂本竜馬記念館 北斗市郷土資料館 松前町郷土資料館 松前藩屋敷 知内町郷土資料館 七飯町歴史館 森町教育委員会 八雲町郷土資料館 福島町教育委員会 江差町郷土資料館 上ノ国町教育委員会 厚沢部町郷土資料館 乙部町公民館郷土資料室 奥尻町教育委員会 大成郷土館 ピリカ旧石器文化館 テーマ「道南の考古学」 テーマ「道南の自然」 テーマ「道南の農業開発の歴史」 テーマ「松浦武四郎が見た江戸時代の道南」 テーマ「道南の美術を知る」 テーマ「幕末維新・箱館戦争」 テーマ「道南のアイヌ」 事務局 未分類 お気に入りブログ
リンク
以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
最新の記事
記事ランキング
画像一覧
|
江差町教育委員会の藤島です。 今回はちょっと変わった視点から開陽丸発掘調査をご紹介したいと思います。 いきなり奇妙なグロテスクな写真で申し訳ありませんが、これが何か解る方いらっしゃいますか? これは「フナクイムシ」です。「フナクイムシ」と云っても「ムシ」ではありません。立派な「2枚貝」です。 どこからどう見れば「2枚貝」だと思う方もいるでしょう。 写真上に写っているのが「貝本体」です。 この先に小さな2枚のプロペラ(貝殻)がついています。幼生が水中で木製品を見つけるとその木に入り込み、プロペラで木を食べながら、トンネル状に進みその周囲に石灰質の膜を作ります。それが写真下です。 イギリスのマーク・ブルネルはこの「フナクイムシ」の生態から、トンネル掘削の「シールド工法」を開発しました。頭のいい人は同じ物を見ても観察力が違います。 余談になりますが、もう25年以上前にテレビ番組の「なるほど ザ ワールド」で東南アジアで現地の人がこれを食べているのを見ました。女性レポーターも食して、その感想が「牡蠣みたい」と云ったのを妙に納得して見ていた覚えがあります。 これも変な写真ですが、明らかに「ムシ」です。「キクイムシ」です。「キクイムシ」には陸上に住む「カミキリムシ」の仲間もいますが、これは水中で木材に喰らいつく「ワラジムシ」の仲間です。昆虫ではありません。 なぜこんな変な写真を皆さんにお見せしてきたかというと、これらは開陽丸の木製遺物から採取したものです。 調査を行っていますと多くの木製品が出土します。陸の遺跡ですと急速な乾燥による変形など木製品に悪影響を与えますが、開陽丸遺跡は海底です。しばらく放置しておいても大丈夫です。 というのは大間違いです。 これが「フナクイムシ」「キクイムシ」の被害を受けた開陽丸の木製遺物です。 開陽丸の発掘調査は昭和59年までに32,905点の遺物を引揚げました。残っているのはたった1点です。大型の船体の一部が残されています。これは18m×12mという巨大な遺物です。推定重量20tはあると思われます。 これが確認された大型船体です。これの引揚げのためには海底での大変な作業が必要であり、さらに引揚げた後の保存処理施設までの運搬、保存処理施設の建設、処理に必要な薬品代、これらを積算すると莫大な経費を要するということで今日まで計画案が具体化していません。 そこで問題になるのが上記の「ムシ」達です。このまま露出させておくと当然、彼らの攻撃を受けます。この船体があるのは内港です。強い薬品を表面に塗布する方法等も検討されましたが公害問題になってはいけません。 そこで銅網や銅板で計画案が具体化するまで被覆して、この船体を護ることにしました。 これが船体を被覆した作業写真です。このままの状態で海底に船体は残されています。 北前船などの小型の木造船は冬など航海ができない時期に川に入り、これらの「ムシ」を退治しました。また開陽丸みたいな大きな木造船になると喫水から下の部分に銅板を貼り付け、防御しました。 この船底部分の悩みは金属船になっても続き、今度は錆との闘いになります。明治18年、日本の特許第1号がこの船底に塗る防錆塗料であったことでも明らかです。 開陽丸発掘調査をちょっと変わった視点からご紹介いたしました。
by dounan-museum
| 2013-03-07 07:00
| テーマ「幕末維新・箱館戦争」
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||