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函館市北方民族資料館の長谷部一弘です。 いよいよ、食欲の秋、収穫の秋、到来です。 道南地方の農産物と言えば、北海道水田発祥の地とされる大野平野のコメ、厚沢部のメークイン、知内のニラ、七飯のリンゴ、赤川のカブ、ダイコン等々が、名産地の美味しい味覚として広く知られているところです。 そこで、我らが道南地方の豊かで美味しい食文化を充分味わうにあたって、そのルーツとも言うべき、近世、幕末における北海道の政治、経済の中心地であった函館地域の農作物や農業事情について注目したいものです。 そこには伝統的な農作物の栽培をベースに、新たな農業の技術改良、振興と発展が、ペリー来航や箱館開港などに象徴される歴史的な社会情勢に少なからず関係していたことがわかります。 近世における函館の農業 近世における函館の農業は、けっして順風満帆ではなかったようです。 とりわけ、天保年間の大飢饉に見舞われた赤川では、「天保4年(1833)、夏、雨続き東風吹き、炎暑の天候 麦は並作、大小豆、粟、稗の類は結実せず。」「蕨の根で生命を保つほどの一層の惨状なり。」上湯川では、「蕨の根、葛の根、昆布、雑草を食し、生命を保つ。」また、神山では、「天保8年、家業は蕨掘りの外なし。」など困窮を極めた状況にありました。 農女図(寛政12年:蝦夷嶋奇観より) 箱館開港の起因となったペリーの箱館来航にあたる安政元年(1854)の亀田では、「畑地を開墾して、菜、大根、大豆、小豆、いんげん、ささけの類を植来。畑地、参万六百九拾五坪、稗、麦、蕎麦、大豆、小豆、野菜を栽培。」、また、「幕府御用達、佐藤平兵衛、山田寿兵衛、杉浦嘉七、亀田村字七軒家に耕種(イネ)するも天候不順にて不作。」と記録されています。 ペリー来航と開港場箱館 ペリーの来航で大騒動となった箱館では、幕府よりペリー艦隊へ「4月27日、薪水炭、葱、韮の類、酒4、5樽を贈る。青物は近在の村より贈る。」、「ホハタンへ、薪250本、水30桶、鶏15羽、鶏蛋(卵)200、鱒20本、鰈45枚、藻魚10本、みつ葉1籠、禰幾1籠、あさつき3篭、牛房(ゴボウ)15把、蛤70、マルコ貝2樽。」の物資が供給されています。 ポーハタン号(亜米利加一条写より) また、翌年の安政2年の記録には「病者養成所に青大角豆(ササゲ)、鶏卵等を遣わす。」、「外国船員に野菜、花実、海産の類を直売、交易。」、「アメリカ小船、薪、大角豆等を積んで出帆。」と記され、弘前の郷士、平尾魯仙(遷)の著した「洋夷茗話」では、外国人が箱館に上陸し市中を生の茄子、胡瓜など食べ歩く様子が紹介されています。 箱館市中を歩く外国人(洋夷茗話より) 開港場箱館と農業開発 安政6年(1859)、貿易港として箱館が開港すると、箱館奉行所は馬鈴薯の栽培を促進します。 そして、「当秋出来の五升芋、相当の値段をもって買い取るので箱館運上所へ持ってくること。」の触書が出されました。 また、外国人への作物の売買には、大角豆、小豆、大豆、蕎麦粉、五升芋、南瓜、葱、大根、人参、蒜がそれぞれ100斤の量の品目として記録に残されています。 箱館が貿易港としてようやく活気づく元治元年(1864)には、箱館から人参、五升芋、大角豆の農作物が輸出されていました。 開港により、箱館が西欧文化を享受する中で、食文化にもその影響がみられ、特に病院では病人のための滋養の高い食事として、煎った牛肉や油で揚げた牛肉、鶏卵の韮入りソップ(スープ)などが出されました。 このような、永禄5年(1561)、亀田村に畑地開墾をもって北海道開拓の礎とされるという近世における函館の農業事情において、文化年間より安政年間にかけた鍛冶村、赤川村、神山村、上湯川村、亀尾村、石川村、下湯川村、桔梗村などでの相次ぐ水田開墾に及んだこともまた、函館という地域に根ざした弛まぬ人々の業として再認識されるものです。
by dounan-museum
| 2013-09-30 05:00
| テーマ「道南の農業開発の歴史」
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