カテゴリ
全体 コラムリレー 市立函館博物館 函館市縄文文化交流センター 北海道立函館美術館 函館市北方民族資料館 函館市文学館 五稜郭タワー 函館高田屋嘉兵衛資料館 土方・啄木浪漫館 北海道坂本竜馬記念館 北斗市郷土資料館 松前町郷土資料館 松前藩屋敷 知内町郷土資料館 七飯町歴史館 森町教育委員会 八雲町郷土資料館 福島町教育委員会 江差町郷土資料館 上ノ国町教育委員会 厚沢部町郷土資料館 乙部町公民館郷土資料室 奥尻町教育委員会 大成郷土館 ピリカ旧石器文化館 テーマ「道南の考古学」 テーマ「道南の自然」 テーマ「道南の農業開発の歴史」 テーマ「松浦武四郎が見た江戸時代の道南」 テーマ「道南の美術を知る」 テーマ「幕末維新・箱館戦争」 テーマ「道南のアイヌ」 事務局 コラムリレー 未分類 お気に入りブログ
リンク
以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
最新の記事
記事ランキング
画像一覧
|
市立函館博物館の佐藤です。 さて,今回はカラスの話をしたいと思います。皆さんは「カラス」と聞かれたら,どんな鳥と答えますか? あまりにも身近すぎて「いまさらカラスなんて」,「もっと違う話を聞きたい」と言われるかもしれませんが,そう言わずに,私の話に少しだけお付き合いください。 日本の中の「カラス」 日本で一般に「カラス」と呼ばれているのはハシブトガラス(以下ハシブト)とハシボソガラス(以下ハシボソ)の2種です。「ハシ」は嘴(くちばし)のことで,太い方がハシブト,細い方がハシボソです。 ハシボソガラス ハシブトガラス 農地という開けた環境で生活する「カラス」は,その多くがハシボソです。ただ,山間部や森林に近いとか,そばに生ゴミ等の食べ物が得られる場所があればハシブトもいることになります。 トラクターが土を掘り返し,ハシボソがそれに群がるのをみて,「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる 」という言葉を思い出しますが,今ならさしずめ(誰かが言った)「ゴンベが種播きゃカラスがほじくる」ということでしょうか。 この言葉,あまりにも当を得ており,妙に納得してしまいます。それを遠巻きにして樹上から見ているのが,ハシブトというわけです。 世界の中の「カラス」 ハシボソは「ユーラシア大陸にすむカラス」,つまり「ヨーロッパにすむカラス」であり,ハシブトは「極東にすむカラス」,つまり「アジアにすむカラス」です。 このことから「同じ資源を好む者同士」が世界的視点に立てばうまくすみ分けしているように見えます。 しかし,日本ではそうなっていませんし,普通なら「同じ資源を好む者同士」が同じ場所にいる場合は,どちらかが残り,どちらかが排除されると言った,排他的関係になりそうなものです。 それも日本では当てはまりません。 つまり,日本は2種の「カラス」がうまく共存している特別な場所と言えるのです。 例えば生ゴミなどの食べ物を獲得する優先順位がハシブト>ハシボソの順といったように,〈力のあるなし〉のバランスが多少なりとも影響しているように思われます。 英語でハシボソはCarrion Crow(キャリオン・クロウ),ハシブトはJungle Crow(ジャングル・クロウ)と呼ばれています。 つまりハシボソは「死肉を食べるカラス」,ハシブトは「密林にすむカラス」というわけですが,実際はどちらも雑食性です。 ただハシボソは植物質を好み,ハシブトは多少動物質を好む傾向にあります。 さらにハシボソ,ハシブトともJungleという「密林」より比較的開けた環境を好みます。 地上に降りて食べ物を探しながら二足歩行しながらテクテクと歩くのがハシボソですし,さらにクルミや貝などを車道に落とし,車に轢かせて割らせるのです。 この行動は函館や近郊でも普通に目にすることができます。 逆にこのような器用なことはハシブトにはできません。 ハシブトは樹上にいるか,地上にいる場合は立ち止まるか両足を揃えてピョンピョン跳びはねて移動するのがせきのやまです。 農地の中の「カラス」 春になると,ハシボソ同士で子育てをするため,巣を構える準備をするためにある一定の広さの空間(=〈なわばり〉)を持つことになります。 この〈なわばり〉を確保するために,ハシボソ同士が争うことになります。 ある程度〈なわばり〉の広さが決まり,ようやく争いが無くなった頃に,ハシブトがその隙間にねじ込むように割り込んできて〈なわばり〉を形成することになります。 これも力関係のなせる技かもしれません。 これは、繁殖のずれにも現れます。子育てはハシボソが早く始まり,遅れてハシブトが始まります。 さらに,ハシブトの子育てが始まる頃,往々にして周囲に生ゴミかそれに類する食べ物があります。 それらに誘引された「カラス」は,さらに農作物に被害をもたらすというわけです。 特に,子育ての頃は,農作物の発芽時期に一致する場合が多いため被害はさらに深刻となります。 これが「カラス」と人との軋轢を生ずる原因となります。 おまけ ミヤマガラス 10年以上前から,普通なら九州・中国地方に冬限定で姿を見せるミヤマガラス(以下ミヤマ)が,やはり冬限定で函館平野の農地に,集団で姿を見せるようになりました。 ミヤマはハシボソに似ていますが,さらに小柄で,くちばしの付け根が羽毛に覆われず露出しています。 成鳥はその部分が白くなっているのが特徴です。 ミヤマの集団の中にはさらに小型のコクマルガラスもいるかもしれませんから,チャンスがあれば観察してみましょう。 おわりに 「カラス」は厄介者と思われがちですが,実は人の生活を映す鏡でもあるのです。 その生活史を知れば,きっと,「カラス」って意外と奥深く,おもしろいと感じるのではないでしょうか。 そう思っていただければ,ここで「カラス」を紹介したかいがあり,うれしく思います。
by dounan-museum
| 2013-10-08 05:00
| テーマ「道南の農業開発の歴史」
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||