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はじめに 前回のコラムでは「農地のカラス」と題して,ハシボソガラスとハシボソガラスについてお話ししました。 その中で「おまけ」としてミヤマガラスも触れましたが,もう少し詳しくお話したいと思います。 なぜミヤマガラス ミヤマガラス(以下〈ミヤマ〉)Corvus frugilegus については前回のブログでも触れています。 2種の「カラス」と同様,Corvus(カラス属)の同じ仲間です。 1980年代前半まで西日本の,主に九州に朝鮮半島から渡来する冬鳥として姿を見せており,ほかの地ではまれにしか見ることができないといわれていました。 ところが,ミヤマガラスのはく製が1998年(平成20)1月に函館山の麓にて保護され,落鳥※したのです。 この個体はその後はく製になり,当館に収蔵されています。 ミヤマガラスのはく製(当館蔵) その当時,函館で〈ミヤマ〉は,まだそれほど多くがいたわけではありません。 函館平野にいた数十羽の群れが夕方になると函館山の麓に戻り,塒入りをする情報が入りつつあった時代です。 〈ミヤマ〉の移動には特徴があり,他の「カラス」が群れを形成し,夕暮れ時に函館山に戻る際,平面的が広がりを保ちながら,主に20~50羽,時には100羽以上の群れで飛んでいくのに対し,〈ミヤマ〉はさらに大きな群れを形成し「円を描くようにして上昇する〈カラス柱(ばしら)〉」をつくりながら移動します。 いつも〈集団行動〉するミヤマガラス 他の2種の「カラス」と同様に,集団で行動することが多いのですが,この鳥はさらにその傾向が強く,「カラス」のようにある一定の広さの〈なわばり〉を持たず,一つの木に数番(つがい)が営巣するというように,「Rookery」(ルッカリー:集団営巣地〉を形成します。 ところで「Rookery」はペンギンやサギの営巣地をこう呼ぶことが多いのですが,本来は〈ミヤマ〉の営巣地のことを言うのです。 ちなみに「Rookery」の「Rook」は〈ミヤマ〉の英名です。この「Rook」は擬声音から来ているというのですが,実際に〈ミヤマ〉は他の〈カラス〉よりも細く弱い声で「カラララ,カラララ」と鳴きます。 あくまで擬声音ですから,「Rook」とも聞こえるのでしょう。 でも私には「カラララ」が「Rook」は結びつきません。 ただ,鳥の名は〈標準和名〉もそうですが,鳥の鳴き声に由来することが多いことは確かです。 カラスの近縁のカケス(北海道産はミヤマガラス)は英名を「Jay」と鳴きます。 これはまさしくカケスの鳴き声,「ジェー,ジェー」そのものです。 繁殖地では木の上から「ルック,ルック」とにぎやかな鳴き声がすることから,〈ルッカリー〉と呼ばれているのでしょうか? 〈ミヤマ〉の繁殖地では日本で繁殖することはないので私は見たことはないのですが…。 七飯町の草地で餌をとるミヤマガラスの群れ(2011.12.04) 〈採餌生活〉のミヤマガラス 話を戻しましょう。 定かではありませんが,〈ミヤマ〉は1980年代後半以降になると,愛媛県や岩手県さらに函館市内や函館市近郊で観察されるようになりました。 それが「NPO法人バードリサーチ」によれば,2000年代以降,その分布はほぼ全国に広がっているようです。 20年ほど前までは,数十羽が越冬する程度だったのが,現在は数百羽とか数千羽といって徐々に数を増やしている種類です。 ところで,このカラスは,漢字で「深山鴉」とか「深山烏」と書き,〈深い山の中にいるカラス〉と思われそうですが,函館平野の,周りに林がない水田や草地などの休耕地に分散して,そこに残った草や稲藁をつついて,多分その中に隠れている虫を探したり落ち穂拾い(?)をするのが普段の行動です。 〈平地の開けた場所にいることが多いカラス〉というのが,「その名にふさわしい」といえます。 雪面だと,遠くから見ると,黒い卵のような塊がうごめいているように見えます。 「カラス」はScavenger(スカベンジャー:腐肉を食べる動物)で,生ゴミを狙って食べると思いがちですが,〈ミヤマ〉のように,その学名のfrugilegusというラテン語が示すとおり,英語の「food-gathering(採餌生活)」そのものです。 〈ミヤマ〉は「food-gathering」がごとく,日々転々と餌場を変えているのです。 今日はどこにいるのか,皆さんも興味があったら探してみてください。 意外に身近なところにいるかもしれませんよ。チャンスは「今でしょう」。 幸運を祈ります。ただ,単独行動は避け,道に迷うなど,事故には十分気をつけてください。 ※落鳥=鳥が死んだとき,直接的表現を避けてこのように呼ぶことが多い。
by dounan-museum
| 2014-02-10 08:12
| コラムリレー
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