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ピリカ旧石器文化館の宮本です。 今回はコラムというより施設のPRに近いですが、しばしおつきあいください。 史跡公園内のちょっと風変わりな木 今金町ピリカ遺跡の公園内に、この辺りでは見かけない風変わりな樹木があるのをご存知でしょうか? 公園に入ると正面に「石器製作跡」という、石器の出土状態をそのまま現地に保存展示する施設が見えますが、その裏手にそれはあります。 グイマツ -黄葉し、すっかり葉が落ちているものも-(2014年11月11日撮影) アカエゾマツ -常緑で葉は濃い緑色-(2014年11月11日撮影) グイマツは秋に黄葉して葉が落ちる寒帯系のマツで、現在は北海道より北のサハリンやロシア沿海州の永久凍土地帯でみられるマツです。 アカエゾマツは常緑で、こちらも寒い環境を好み、現在は道央から道東、道北地域が分布の中心域となっています。 人為的に植えたものは別として、いずれも現在の道南では見られない珍しい木といえます。 なぜ、ここにはこのような木が植えられているのでしょう。 花粉分析の成果 1983年、ピリカ遺跡で発掘調査が行われた際、石器を含む地層から土壌サンプルが採取され、顕微鏡でくわしく調べる花粉分析が行われました(山田1985)。 花粉分析は、地表に生えていた植物の花粉が空中に舞い、最後は地中に残されることを利用し、古環境の復元を試みる研究法です。花粉化石自体は非常に小さいため、様々な化学処理を経て、400倍程度の顕微鏡を使った丹念な観察が必要で、時間と根気のいる仕事といわれています。 さて、分析の結果、ピリカ遺跡の土壌サンプル中から多くの花粉化石がみつかり、その中にグイマツとアカエゾマツの花粉化石も見つかったというわけです。 以下、分析を担当された山田悟郎さんの報告をかいつまんでご紹介します。 土壌サンプルは発掘現場の地層断面の中から大きく 1.石器を含む地層より下の層 2.石器を含む地層 3.石器を含む地層より上の層 の3ヶ所から採取され、それぞれ花粉化石の種類と数量、構成比を調べたところ、次のような環境の移り変わりがわかりました。 1.「アカエゾマツ-グイマツ林の時代」 この時代は氷河期の中でも最も寒い時期に当たり、針葉樹がまばらに生える草原が広がっていた。 2.「シラカバ-アカエゾマツ-グイマツ林の時代」 1の時代と比較して針葉樹が減り、代わってカバノキ属の広葉樹が増加し、徐々に温暖化が進んだ。しかし依然として森林はみられず、針葉樹がまばらに生える草原が広がっていた。 3.「ミズナラ-シラカバ-トドマツ林の時代」 急激に温暖化して一気に広葉樹が優勢となり、グイマツやアカエゾマツは温暖化に適応できず絶滅した。現在のような針葉樹と広葉樹が入り混じる森林が形成された。 ピリカ遺跡の人々がみた景観 ピリカ遺跡の営まれた時代は上記2の地層の段階で、年代にすると今からおよそ2万年前から1万年前、旧石器時代の終わり頃、氷河期の最後の段階にあたります。 さきほどの花粉分析の結果に対比すると、ピリカ遺跡の人々が暮らしていた環境は、グイマツやアカエゾマツのまばらな林に広葉樹が若干混じる草原が広がっており、現在のサハリンやシベリアのような、寒くて乾燥した気候だったようです。 こうした風景は道南ではまずみられませんが、道北まで足を伸ばすと参考になるいくつかの場所があります。その一つが上川町にある浮島湿原です。ここは旧石器時代の景観イメージとして概説書などでよく紹介されるところで、昨秋訪れる機会がありましたので写真でご紹介します。 秋の浮島湿原 アカエゾマツの林(2014年9月26日撮影) 道南のブナやナラ、シラカバなど、広葉樹を主とする森に目が慣れているせいもあり、この湿原にたどりついた瞬間、一種異様な雰囲気に包まれたことを覚えています。 ・・・木々の合間でオオツノジカが草を食み、一方ではバイソンが平然と闊歩する。そんな旧石器時代にタイムスリップしたかのような、とても貴重な体験でした。 今金町教育委員会では、このような旧石器時代の景観を感じてもらおうと、花粉分析で得られた氷河期を象徴するグイマツとアカエゾマツに着目し、それらの幼木を公園内に植え、景観イメージを作り上げる整備を行っています。 植樹時からすでに丈が2倍ぐらい伸び、比較的暖かいこの地域でも、なんとか育っているようです。 来館の折には、ぜひこちらもご覧になっていただきたいと思います。 植栽時のアカエゾマツ(手前)とグイマツ(奥)(2003年頃撮影) 参考文献 山田悟郎 1985「美利河1遺跡の古植生について」『今金町美利河1遺跡』北海道埋蔵文化財センター 石城謙吉・福田正巳 1994『北海道・自然のなりたち』北海道大学図書刊行会
by dounan-museum
| 2015-02-06 12:00
| テーマ「道南の自然」
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