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市立函館博物館の保科です。 当館では、一応資料一点一点に「キャプション」という資料の名前や所蔵先や解説を書いたプレート状のものなどを付けます。場合によってはまとめて一つのキャプションにしてしまう場合もあります。 キャプションは、資料名が記載され次に解説文が記載されるパターンが一般的かと思います。展示している資料がどのようなものなのかを、限られた文字数で説明し、気を引くようなデザインで読んでいただけるように、あれこれと悩んでいます。 先日歴史系の雑誌に次のような投稿がありました。 展示批評 館山市立博物館 特別展 「安房の干鰯 いわしと暮らす、いわしでつながる」を見て 鎮目良文 (『地方史研究』373号 2015年2月発行) その中の一文に、キャプションに触れた次のような文章がありました。 「そうしたなかで、本展覧会には、展示としても、また内容的にもさまざまな工夫がされているように思えた。例えば、キャプションの作り方である。正式な「資料名」とは別に、展覧会の内容に合わせて考えられた資料タイトル(キャッチコピーというべきか)は目を引いた。これは解説の要約にもなっているため、それだけを一旦読み、資料を見るという楽しみ方もできるようになっていたし、資料の何が大事か(何を言いたいか)を示していることから、見学者に「なぜその資料がこのコーナーに置かれているか」を説明しているようでもあった。」 実は当館においても15年以上前から、資料名の他にその資料にできるだけ注目してもらいたいと思い、気を引くようなタイトルを付けてきました。付け始めた頃に、とある年配の学芸員?研究者?の方から「なんだこれは! ふざけているのか!」と言われたこともありました。学芸員の方からも特に「いいね!」と言われたこともありませんでした。また、さかのぼること20年くらい前に、日本博物館協会の大会に参加する機会がありました。その時のテーマが確か展示についてで、その際にキャプションのことについて発言しました。「博物館のキャプションのタイトル(資料名)は難しいので、もっと分かりやすいほうがよいのでは。例えばこのテーブルなんですが、「○○社 A-123」というタイトルではよく分からないので、「折りたたんで使える会議用テーブル」と書いたらどうでしょうか?」と提案したところ。とある陶磁器を扱う美術館の方から間髪入れずに「無理です」と言われました。その方はきちんと例を挙げてくれました。例えば「○○○○○茶碗」というタイトルを分かりやすく説明すると、といって1分間位説明をしてくれました。「なーんだ、よくわかるじゃんそれで」という思いは出さずに、ビクビクと「それを短く分かりやすく書いたらダメですか」と聞いたら、ビシッと「無理です」と言われました。そうですよね、すばらしい作品に長々とした大きなキャプションは目障りですよね。でも、私みたいに感性の無いものにとっては、分かりやすい解説があるとなるほどと思うのですが。それがそもそもの間違いで、作品が語る声を聞け、くだらない解説は作品の邪魔なんですね。 という経験をしたこともあり、この文章を読んで、「あ~他のところでもやっているんだ。評価してもらっているんだ。」と、ちょっとだけウルウルしました。但し、展示批評に取り上げられるような特別展なので、下記にあげたような変なタイトルではなくもっときちんと考えられたものだと思います。 タイトルは、すべての資料ではなく、すべての特別展でもなく、特に決まりはないのですが、私の担当する歴史分野、特に古文書・古記録類のミミズの這ったような文字で書かれている資料についてはなるべく付けようと努力しています。ただ正直な話疲れます。苦労してタイトルを付けてもパッとしなかったり、眉をひそめられたりすると、もうやめようかなとは思います。やめた方がいいのかなと思った理由はもう一つあります。来館者の方が「遠山の金さんの資料について教えて欲しいんだけど」とか、子供たちが「借金、借金」といっているのを聞いたとき、タイトルに注意がいき、実は内容が伝わっていないのかなと感じる瞬間がありました。そうすると頭をもたげてくるのが「作品の邪魔」という言葉です。資料に応じて検討することが大切だとは思いますが、特に展覧会の時などは追われていてそこまで考えが至らないのが現実です。それでも、もう少しがんばろうかな…。評価されることもあるみたいなので。 これまでに作成したタイトル入りのキャプションの一例です。 ■異国船接近!非常態勢をとれ 異国船漂着之次第 寛政9年、再びエトモに来航したイギリス船プロビデンス号は津軽海峡に入ってきました。松前藩は非常態勢をとり警戒にあたりました。その時の様子が書かれています。 ■遠山の金さんが蝦夷地に 未曾有之記 著者遠山金四郎景晋(かげみちは、テレビでおなじみの「遠山の金さん」こと遠山金四郎景元(かげもとのお父さんです。寛政11年幕府の命を受けて蝦夷地調査をおこないます。金さんこの時6歳、父親の帰りを待っていたのでしょうか。 ■この地道な作業がやがて大きな実を結ぶ 五稜郭内発掘調査風景 これらの写真は平成17年6月から10月にかけて行われた、箱館奉行所復元整備に伴う発掘作業の様子です。平成元年に庁舎平面図などの古記録をもとに奉行所跡の大規模な発掘を行いました。その後も附属建物の確認調査などが行われました。そして平成17年、奉行所復元に向けた最後の大規模な調査が行われました。 ■正月早々借金の依頼 金子借用証書 蓬莱町・豊川町で貸座敷・料理屋を経営していた武蔵野清次郎が、西澤弥兵衛から「弐千弐百円」もの大金を借りた書類です。 ■五代目、進級危うし! 酒谷長作宛岡崎半治書翰 五代目小三郎は中学校(現在の高校)を退学させられ、ワチガイ酒谷商店の支配人が各方面に手を尽くして、受け入れてくれる学校を探していますが、うまくいかなかったようです。 ■勉強するように言ってください 酒谷長作宛酒谷ツネ書翰 今も昔も親が子供の成績を心配するのは変わりないようです。父親の権威が高かったこの頃は、父親の一言が子供たちには効果的だったのでしょう。長英は魚釣りやセミ取りに忙しいようです。 ちなみに、当館には明治期と思われるキャプションから昭和40年代頃と思われるキャプションを博物館史資料として保存しています。正確にはいつ頃のものとは断定はできませんが、参考までに写真を付けました(写真1~5)。 写真等での確認はとれてはいませんが、鉄製の板に書かれたものは恐らく展示ケース(写真6)の外に掲げたもので、紙製のものはケース内においたものではないかと考えています。 どうしてこのようなキャプションがあるかは、以前に書いたコラム「明治期製作の漁船模型、萩に向けて出向!」をお読みいただくと分かると思います。
by dounan-museum
| 2015-02-16 07:07
| 市立函館博物館
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Comments(1)
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by
キリンレモン
at 2015-06-20 21:28
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いろんな記事を興味深く読ませていただきました。大変がんばっておられる姿に共感いたします。私たちの仕事は営業ですのでお客様にどう「商品」の良さをわかって、たくさん買っていただくのかが仕事です。ですから相手の立場に立ちいかにわかりやすく説明できるかが勝負です。「お客様本位」がスローガンです。まさに同じ世界を生きてるのだなと思いました。更なるご活躍お祈りしております。
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