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市立函館博物館の小林です。 今年の夏,当館で行われた資料調査で面白いことがわかりましたので,それについて紹介します。 対象は磨製石斧で,その石材についての調査を明治大学黒曜石研究センターの客員教授である中村由克氏が実施されました。中村氏は,発掘報告書で「いわゆる蛇紋岩(ジャモンガン)」として記載されている石材に注目し,その出現頻度を調査されてきました。これまでの成果から東北を含めた東日本の傾向として,縄文早期には一般的に見られることが確認され,それが函館でも確認されるかが,今回の調査の目的でした。 当館では,中野B遺跡(縄文早期)出土の磨製石斧2点,サイベ沢遺跡(縄文前・中期)出土の磨製石斧28点と石鑿2点,陣川町遺跡(縄文中~晩期)出土の磨製石斧1点,日吉町A遺跡(縄文後期)出土の磨製石斧11点,松前吉岡山中出土と出土地不明の磨製石斧(時期不明)各1点の合計46点を用意して,調査して頂きました。 発掘担当者が肉眼観察などで「いわゆる蛇紋岩」として報告書に掲載している石材は,実は「透閃石岩(トウセンセキガン)」という岩石です。これが東日本では縄文早期に一般的に確認されるのですが,中野B遺跡の資料のうち1点は「透閃石岩」であることがわかり,東日本と同様の傾向が認められました(写真1参照)。 函館とは津軽海峡の対岸に当たる青森県を始め東日本では,縄文前期以降になると「透閃石岩」の頻度は低くなり,その一方で「緑色泥岩(リョクショクデイガン)」の割合が高くなることも,中村氏の調査で確認されています。これについては,道南を代表する縄文前・中期の集落遺跡であるサイベ沢遺跡では30点のうち13点が「緑色泥岩」で,約44%を占め,縄文後期に相当する日吉町A遺跡では11点中9点が「緑色泥岩」で,さらに頻度が高くなっていることがわかりました。 サイベ沢遺跡と同時期の特別史跡三内丸山遺跡では,磨製石斧の石材は「緑色泥岩」の頻度が高く,その「緑色泥岩」には平取町産の「アオトラ石」が一般的に認められます。一方,サイベ沢遺跡では「緑色泥岩」の頻度は同様に高いものの,13点すべてが「アオトラ石」では無く,対照的な特徴を示していました(サイベ沢遺跡の磨製石斧(「アオトラ石」以外)写真2参照,日吉町A遺跡の磨製石斧(「アオトラ石」)写真3参照,日吉町A遺跡の磨製石斧(「アオトラ石以外」)写真4参照)。 このサイベ沢遺跡の傾向は東日本とは顕著に異なり,産地である平取町から(函館よりも)遠方にある三内丸山遺跡で「アオトラ石」を石材とする磨製石斧が一般的に見られることに私たちも驚きましたが,函館から最も近い「透閃石岩」の産地が松前町であるのに対し,「緑色泥岩」はどの地域でも見られる岩石であることから,在地の原石をより多く使用した可能性が考えられるとのことでした。 この度の調査から得られた成果を元に,縄文早期の磨製石斧の石材の傾向と,縄文前・中期の磨製石斧における「アオトラ石」の頻度について追跡調査することで,函館市内の磨製石斧の石材について,より詳細な傾向が把握できると思われます。
by dounan-museum
| 2016-10-29 08:00
| テーマ「道南の考古学」
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