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最近、久しぶりに石器を実測する機会があり、いろいろ思うところがありましたので、この場を借りて書かせていただきます。しばしお付き合いください。 さて、考古学は土器や石器、骨角器など、多種多様なモノをもとに過去の人々の暮らしぶりを考える学問です。ですから当然のことながら、考古学者にはモノに対する正確な観察眼が求められます。その観察眼を磨くのに最も基本とされるのが「実測」という作業です。考古学を学ぶ学生にとって実測は避けて通れませんし、私も学生時はずいぶんと時間をかけました。 では実際、実測をどのようにやっているのか、過去の私の仕事を例に紹介しましょう(下写真は2001年撮影、右は筆者)。 ![]() ![]() 実測(下図)が終わったところ 左端はピリカ遺跡出土の頁岩製石器で、「削器」と呼ばれる加工具の一種です。なお、これは共伴する遺物の特徴等から今から1.5万年前頃と推定されるものです。以下、実測の手順を列記します。 ①表面を入念に観察し、このカケラ自体がどんな石核からもたらされたのか、これに対してなされた「刃付け」作業がどの方向から、どの程度加えられ、どんな形が目指されたのか。総体としてこの形状で残された意味や使われ方を考える。 ②全容を理解した時点で石器の上下を判断し、微妙な角度を調整して方眼紙の上に固定する。 ③外形をとり、トレーシングペーパーで転写し、反対面の外形を書く。 ④石器表面の稜線をディバイダー(コンパスのような計測器)で測り、表面を見ながら正確に線でつなぐ。 ⑤剥離面と剥離面との前後関係(割られた順番)を表現する。 ⑥側面図、断面図、打面部を追加する。 ⑦実測を終えた時点で、総合的な所見を添える。 私の場合、以上のような手順で実測しています。 ![]() ![]() 今金町教育委員会編 2002年『ピリカ遺跡Ⅱ』所収の実測図(上:削器、下:彫器)
![]() 発掘調査報告書(下段は今金町内、上段は全国各地から送付される報告書) 「石器の実測が一番難しい」という話をよく耳にしますが、それは何となくわかる気がします。なぜなら、他の材質の遺物と違い、石器は作る過程でどんどん形が小さくなり、表面の痕跡が複雑化するからです。石器表面の痕跡一つ一つがどんな行為によるものかを判断するには、石器製作体験に学ぶところが大きく、少なくとも数年に及ぶ経験がなければ難しいでしょう。 私にとって実測とは、遺物をどう理解したかを表現する観察レポートです。ですから実測図は、それを書いた観察者が理解した範囲内の主観的産物に他なりません。私より経験豊富な方なら、同じモノを見ても違った図になることでしょう。 実際にモノを手に取り、自分の目で観察することが重要なのは言うまでもありません。論文を書こうとすればなおさらで、できれば自ら実測するのが最善です。特に石器の実測に関しては、個人の経験差でかなりの違いがあるのが実態ですので、報告書の図だけで判断するのは大きな危険を伴います。モノを見ることが考古学の基本と言われる所以ですね。 さて、なにせ十数年ぶりの実測、細かい部分のやり方をもう忘れてしまっています💦 しかも何やら目も少し老化しているようで、もっと楽にできないものか模索中です(笑)。最近の現場ではどんな石器実測がなされているのでしょう? 同業者の皆さん、何か良いアイディア・方法あれば教えてください!
by dounan-museum
| 2017-02-11 10:24
| コラムリレー
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