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元・市立函館博物館の大矢です。 現在は函館市教育委員会文化財課に所属しており、「博物館施設等」にはおりませんが、ご縁があって投稿させていただいております。 今回は道南のアイヌ資料としては質・量ともに世界的に並ぶものがない(と個人的に思っている)、市立函館博物館所蔵「椎久コレクション」について紹介します。 椎久コレクションは八雲町遊楽部(ゆうらっぷ)のコタンで指導者的立場にあった椎久年蔵(アイヌ名トイタレキ、1884-1958)が所蔵していた民具で、トイタレキエカシ(エカシ=アイヌ語で男性の尊称)の死後に遺族から寄託・寄贈された47件と、その他9件の合計56件から構成されます。 トイタレキエカシは道南地方随一のアイヌ文化の伝承者で、多くの研究者がその教えを請うため足しげくエカシのもとを訪れました。そのため、北海道大学(札幌市)や大谷大学博物館(京都府)などにも関連資料が残されていますが、市立函館博物館の椎久コレクションは、質・量ともに群を抜いているといっていいでしょう。その椎久コレクションの特徴について、以下にいくつか紹介します。 ![]() 椎久年蔵(椎久家提供) 前述しましたが、和人地に近接していた道南地域は、他地域よりも早くから和人風の生活習慣への同化を余儀なくされたということもあり、世界的に見ても当地域で収集されたアイヌ資料というのは極めて稀です。エカシの死後に遺族から市立函館博物館に寄託・寄贈されたコレクションは、信仰・儀礼用具が大部分を占めていますが服飾品や狩猟具なども含まれており、ある程度往時の生活の様相を垣間見ることができます。
![]() 多様性に富んだ資料構成 椎久コレクションで興味深いのが、単なる民具資料にとどまらず、文書資料や音声資料なども含まれていることです。これらは近年椎久家から寄贈されたもので、前者は北海道旧土人保護法による未開地の給付などを示すもので、後者は1955年ころにトイタレキエカシの肉声を録音したものです。 とくに音声資料は2013年にアイヌ語研究者である大野徹人氏によって翻訳され、テキスト化されています。録音されたアイヌ語八雲方言の重要性もさることながら、仲間と笑いあったり母親を思い出して涙ぐんだりするエカシの温かな人柄が音声から伝わってきます。 ![]() 1931年に研究者の求めに応じてアイヌ語八雲方言を録音した際の写真 後列右側がトイタレキエカシ (『日本語原研究の道程 続編』より)
一般的にアイヌの狩猟具といえば、弓(ク)や突き鈎(マレク)など伝統的なものを想像しがちですが、少なくとも近代以降は当然ながら銃が使用されていたはずです。ただ研究者などが資料を収集する際には、そのような近代的な狩猟具はどうしても避けてしまいがちになり、結果現在の各地の博物館にはそのような資料がほとんど所蔵されていないというのが現状です。 近年椎久家から寄贈された資料の中には、トイタレキエカシ愛用の村田銃があります。代々家に残されていたものだけに、来歴もしっかりしています。エカシは徳川義親公の熊狩りにも同行していますから、この銃はその時に使われたものかもしれませんね。 トイタレキエカシ愛用の村田銃(市立函館博物館所蔵) 道南のアイヌ文化については、まだまだ分かっていないことがたくさんあります。その中で椎久コレクションは、一筋の光を投げかける貴重な資料群であることは間違いありません。椎久コレクションだけでなく、各地の博物館に所蔵されている道南のアイヌ資料も総合して調査・研究することで、さらにわかってくることも十分あるでしょう。 これらの調査・研究が道南のアイヌ文化研究につながっていくことはもとより、その成果を地域に還元することで、地域に暮らすアイヌの方々の先祖を敬う気持ちの涵養や、ひいては全国的なアイヌ文化理解に少しでも寄与できればと考えています。
by dounan-museum
| 2017-09-11 00:08
| テーマ「道南のアイヌ」
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Comments(1)
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八雲町のユーラップアイヌ椎久家と倉本家の歴史が繋がっています。
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