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市立函館博物館の小林です。この夏、当館では、「能登川コレクション展-考古学に魅せられて・能登川隆の生涯-」という企画展を開催しました。その展示資料のなかから、恵山貝塚出土のクマ意匠のある資料について紹介します。 恵山貝塚は函館市東部の恵山地域、津軽海峡を臨む海岸段丘上に位置し、道南の続縄文時代を代表する貝塚です。縄文時代晩期の亀ヶ岡土器の系統を引き継ぐ「恵山式土器」、漁撈との関りを示す魚形石器、緻密に加工され精巧な彫刻で装飾された骨角器などは、考古学ファンのみならず多くの方々の興味・関心を集めています。当館が所蔵する恵山貝塚出土の資料は、函館の郷土史家能登川隆が大正年間から昭和30年代にわたって発掘・収集した「能登川コレクション」などから成り、「能登川コレクション」の恵山式土器と骨角器のうち568点は、函館市の有形文化財に指定されています。 また土器では、土器の口縁部に突起としてクマの頭部が表現されたもの(写真4参照)と、土器の把手としてクマが表現されたもの(写真5参照) があります。特に把手では、写真5のように全身を把手としてかたどったものと、頭部を中心にかたどったものがあり、まとまった点数が確認されます。函館市近隣の続縄文時代の遺跡からも、1遺跡からクマの頭部の突起が複数出土している例があり、土器の突起や把手としてクマを表現することが、続縄文時代には一般的に行われていたと思われます。このように骨角器と土器にクマの意匠が見られることから、続縄文時代の人々にとってクマは、特別な思いで意識された対象だったと思われます。 写真6:イクパスイ(国指定重要文化財) クマの意匠を施した資料としては、アイヌ文化のイクパスイに単独あるいは親子など複数のクマを立体的に表現したものと、写真6のように熊送りを表現したと思われるものがあります。アイヌの人々がクマを「山の神」として畏敬し、熊送りの儀礼をおこなうなどクマを特別視していたことは広く知られています。このようにクマへの特別な思いを寄せることを背景として、イクパスイにもクマが表現されたものと考えられます。 ここで北海道史を振り返ると、縄文時代の後、北海道には弥生文化は見られず続縄文時代となり、擦文時代、オホーツク文化期を経てアイヌ文化期を迎えます。続縄文時代以降、北海道は独自の文化を形成していくこととなりますが、須恵器・土師器ではなく縄文のある土器を使い続けること、水田による稲作を中心とした生業ではなく漁撈への比重を高めた狩猟・採集を継続するなど、続縄文時代から北海道は独自の歴史・文化をたどり始めます。これと同様にクマに寄せる特別な思いも続縄文時代に芽生え、それがアイヌ文化へと受け継がれたと思われます。(今回紹介した恵山貝塚出土の骨角器と土器は、現在も市立函館博物館で展示中です)
by dounan-museum
| 2017-09-19 00:10
| テーマ「道南のアイヌ」
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