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市立函館博物館の佐藤 理夫(みちお)です。 今回は,2014年度に行った郷土学講座でお話した「不思議な鳥 ルリビタキ」を再構成してみました。少々お付き合いください。 はじめに 「幸せの青い鳥」と聞いたら,皆さんならどの野鳥を思い浮かべますか? オオルリ(ヒタキ科)ですか? コルリ(ヒタキ科)ですか? それともルリビタキ(ヒタキ科)ですか? これらの野鳥は,「瑠璃三鳥(るりさんちょう)」と呼ばれ,いずれの雄も青色(瑠璃色)を帯びていて美しい鳥です。綺麗なモノに出会ったら,皆さんはどんな気分になりますか? 私は一人にんまりして,ほくそ笑み,そして幸せな気分になります。 これはあくまでも鳥の話です。 〈渡らない鳥〉と〈渡る鳥〉 野鳥には〈渡らない鳥〉と〈渡る鳥〉がいます。前者は〈留鳥〉で,1年中同じ場所に留まり,そこで繁殖も越冬もする鳥のことです。最近は,〈留鳥〉と呼ばれていたシジュウカラも渡りをすることが分かってきました。後者は〈渡り鳥〉です。 渡り鳥は,毎年春と秋に,繁殖地(卵を産み,子育てをする場所)と越冬地(冬を越す場所)の間を移動します。これには夏鳥,冬鳥,旅鳥,迷鳥,漂鳥がいます。この区分は以下の通りです。 夏鳥―春になると南方からある地域に渡ってきて繁殖をし,秋には再び南方に去っていく鳥。 冬鳥―ある地域より北方で繁殖し,秋になるとある地域に来て越冬する鳥。 旅鳥―ある地域に繁殖も,越冬もしないで,春と秋の渡りの途中に一時的に立ち寄る鳥。 迷鳥―天候などの影響で本来の渡りのコースを外れて,ある地域にやって来る鳥。 漂鳥―春に日本国内の,より北方で繁殖し,秋にはより南方で越冬する鳥。夏に高い山で繁殖し,冬に平地に降りてくる種類もこれに当てはまります。 〈漂鳥〉にはウグイスと今回主題のルリビタキ等が含まれますが,この〈漂鳥〉を,北海道で当てはめるのは少々難しいと感じています。 皆さんは函館山で思い浮かぶ渡り鳥は何でしょう? 函館山のルリビタキ 私は,1981年から函館山で秋季を中心に鳥類標識調査(以下バンディング)を始めて今年(2018年)で38年,7年のブランクがありますからほぼ31年になります。2018までに標識放鳥した鳥類は,86種20,417羽(年平均658.6羽)となり,この中で,最も多いのがルリビタキの7,115 羽(同229.5羽)でした。これは全放鳥数の34.8%にあたります。 ルリビタキは,調査を始めた1981年から,毎年変わらず一番多く記録される渡り鳥です。 さらに,全国で放鳥されたルリビタキの総放鳥数から比較すると,20~30%を占めており,今では,全国有数の渡りの中継地として知られるようになっています。これは,1981年以前では知られていなかったことです。 余談ですが,私が函館山で渡り鳥の調査を始めた頃は,函館市の鳥を決めようとしていた時期に重なります。この時,市民アンケートでは「カモメ」が優勢だったようですが,結果的に「ヤマガラ」に決まりました。この理由は,この鳥が函館山とその周辺に生息し,函館市の木である「オンコ(イチイ)」の実を食べることからというモノです。 私なら,多分,「ルリビタキ」を推したことでしょう。 ルリビタキ雄・成鳥(1991年11月14日放鳥) 旅鳥としてのルリビタキ 函館山のルリビタキの個体数は,10月20日前から徐々に増加し,11月10日までに徐々に減少していきます。つまり,10月下旬から11月上旬の2週間に,函館山を通過するルリビタキが最も多い時期なのです。大げさに言えば,この時期,函館山は,ルリビタキで〈あふれかえる〉と言っても過言ではありません。ですから,ルリビタキは,函館山では繁殖も越冬もしませんから,〈旅鳥〉と言えます。 函館山で観察されるルリビタキは,雄・成鳥,それも<体上面全体が青みを帯びる>個体が数多く記録されるのが特徴です。また,雄個体3,013羽のうち,682羽が<体上面全体が青みを帯びる>個体であることから,実に全体の22.6%を占めることになります。さらに<青みがまだ少ない>成鳥個体を含めると803羽で,全放鳥数の27%となります。 他の種の成鳥は,多くても20%を越えることがほとんどありません。つまり,この時期,単に,函館山を通過ルリビタキが多いというだけでなく,<体上面全体が青みを帯びる>雄・成鳥個体が圧倒的に多いといえます。 ルリビタキ雄・成鳥(1995年10月24日) 私にとっては,渡り鳥の中では,ルリビタキがこの最も美しく感じます。ルリビタキはまさに,私が追い求める「(幸せの)青い鳥」なのです。 と同時に,美しいモノは,ひっそりと目立たない方が良いのかもしれないとも思っています。 この鳥は,オオルリとコルリのように繁殖のために函館山にやってくる夏鳥と異なり,春と秋の一時期しか姿を見せません。しかも,雄・成鳥が<体上面全体が青みを帯びる>個体の内,完成羽(すべての羽がきれいに青みを帯びた状態)となった個体に出会うことは,姿を見せる時期が限られているため,非常に難しいと言えます。だからこそまた会いたくなります。 毎年,この鳥が函館山を通過する時期になると,気分は落ちつきません。毎日,天気予報を気にしながら函館山を見ることになります。 以上,尻切れとんぼですが,ルリビタキの話はここで一旦終わりたいと思います。 機会がありましたら,次回,〈ルリビタキはどのように渡りのか〉,〈ルリビタキはいつ青くなるのか?〉,〈雌と雄の違い〉等の話題について触れたいと思います。
by dounan-museum
| 2018-12-03 09:00
| コラムリレー
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