カテゴリ
全体 コラムリレー 市立函館博物館 函館市縄文文化交流センター 北海道立函館美術館 函館市北方民族資料館 函館市文学館 五稜郭タワー 函館高田屋嘉兵衛資料館 土方・啄木浪漫館 北海道坂本竜馬記念館 北斗市郷土資料館 松前町郷土資料館 松前藩屋敷 知内町郷土資料館 七飯町歴史館 森町教育委員会 八雲町郷土資料館 福島町教育委員会 江差町郷土資料館 上ノ国町教育委員会 厚沢部町郷土資料館 乙部町公民館郷土資料室 奥尻町教育委員会 大成郷土館 ピリカ旧石器文化館 テーマ「道南の考古学」 テーマ「道南の自然」 テーマ「道南の農業開発の歴史」 テーマ「松浦武四郎が見た江戸時代の道南」 テーマ「道南の美術を知る」 テーマ「幕末維新・箱館戦争」 テーマ「道南のアイヌ」 事務局 未分類 お気に入りブログ
リンク
以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
最新の記事
記事ランキング
画像一覧
|
市立函館博物館の奥野です。 博物館には、様々なモノにまつわる相談が寄せられます。ある日、屋外で拾った生き物の骨が、何の骨か調べるために来館された親子がいました。下の写真がその骨の写真です。 後日、自然分野担当の学芸員に骨のことを伝えましたが、骨は白色でするどい歯があり、見つけた場所が屋外だったので、当初は哺乳類などの小動物の下顎の骨ではないかと考えました。とはいえ、歯の形状がネズミなどとも違うし、何の骨だろう、大学などの専門の先生で誰かわかりそうな人はいないか、といった話になりましたが、まずは骨を持参してもらい、あらためてお話しを伺うことにして、再度来館してもらいました。 実際に骨片を見ながら話をするなかで、当館にも標本はあるので、いろいろな動物の標本と比較することはできるかもしれない。種名まで分からなくても、どのような動物のものなのか、見当をつけることはできるかもしれないという話になりました。 その時、ちょうど標本(魚類剥製)を展示していたため、展示室を歩きながら、例えばこういった標本があるので比較すると……と話していた矢先。ん、展示していたマダイの歯に似ているような……。 展示していた1886年(明治19年)函館で採集されたマダイの標本(剥製) この時は、マダイの骨かどうかまでは確定できませんでしたが、当初考えていた哺乳類ではなく、魚類の歯であるらしいことがわかりました。また魚類の中でも食べるものによって、歯の形状は変わります。屋外に落ちていてもおかしくない、そしてこのような形状のするどい立派な歯を持っている魚ということで、マダイは依然として有力候補です。実物に勝るモノはありません、マダイそのものを置いている魚屋さんに行って比較してみると分かるかも知れないということになりました。 その後、保護者の方はお店でマダイを購入し、子供さんと実際に比較してみたところ、やっぱりマダイの骨だった、という連絡がありました。当初、陸生の小動物の骨を想定していたのですが、なんと魚の骨だったというオチです。 生ゴミでもあさったのか、餌として与えられたのかは分かりませんが、この骨は動物の食べかすの可能性が高いと思いました。私の頭のなかではあの国民的アニメ「サザエさん」のオープニングソングの歌詞「お魚くわえたドラ猫……」という歌詞が思い浮かびました。 現代はインターネット上で検索すると、カラー画像や映像、説明など、様々な情報が簡単に手に入る時代になりました。そのような時代のなかで、当館でもディジタルアーカイブなど新たな取り組みにも着手していますが、博物館は基本的に実物資料を保存し、展示、活用する機関であることに変わりはありません。 モノは保存するだけでもコストがかかりますので、時々、なんだか時代に逆行しているような、存在意義が薄れていくような感覚を覚えることもあります。 しかし、今回のようなある生物の一部分をじっくりと観察する場合、標本がとても役に立つことをあらためて思い知らされました。他の分野の資料でも同じことだと思います。 あまり一般の方には知られていませんが、函館図書館の父、郷土資料の収集で知られる岡田健蔵は、図書館人でありながら「百聞は一見に如かず」として、博物館をもう1つの知識の源として、その設立と運営に意欲的でした。岡田もこのような「経験」の効用を、よく知っていたということでしょう。 たった1片の骨からですが、調べてみると面白いこともあるものだ、と思いました。この時の経験は、博物館に勤務する学芸員として、様々なことを考えさせてくれる出来事として、とても印象に残っています。
by dounan-museum
| 2020-07-02 20:00
| コラムリレー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||