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江差町教育委員会の宮原です。 江差町の冬の味覚のひとつに「寒のり」があります。 冬の寒い時季に採取して加工することから「寒のり」と呼ばれ、香りが強く、江差では海苔弁当やおにぎりなどにして食べます。 今回は、2020年2月に調査した鴎島での海苔採りとその加工についてご紹介します。 江差での海苔採りの記録は、江戸時代にまでさかのぼることができます。 平秩東作は『東遊記』という本で、江戸時代中期の海苔採りについて記しています。 海藻海苔上品なり、岩にかかりたるを引きめくりて食用にす、品川海苔などとるよりは大いに心やすきなり(『日本庶民生活史料集成』第四巻より) 「海藻や海苔は品質が良い。岩に付いている海苔を引きめくって採って食べる。江戸の品川海苔の養殖よりはとても簡単だ。」という意味です。 また、江戸時代末に江差を訪れた松浦武四郎は『再航蝦夷日誌』という本で、江差の名産品を15品挙げていますが、その中に「紫海苔」と「布海苔」の2品が含まれています。 「紫海苔」は今回お話しする岩海苔を、「布海苔」はフノリを指していると思われます。 「寒のり」の採取と加工は、おおよそ12月から3月にかけて行われます。 鴎島の岩肌に付いている海苔を、カギを使って引っ掛けて採取します。 地元のかたは、糸のように細く引きちぎるように採る海苔を「イトノリ」、細長い湿布をはがすように採る海苔を「ハバノリ」と呼んで区別しています。 加工する際には「イトノリ」と「ハバノリ」を混ぜますが、「ハバノリ」の方が香り高いそうです。 鴎島は、約1500年前に起きた海底火山の噴火で積み重なった火山灰などが固まった凝灰岩でてきています。
凝灰岩はでこぼこが多くて海苔が付きやすいのですが、もろいのが特徴です。 カギを使って海苔採りをすると、海苔と一緒に凝灰岩の欠片が付いてきてしまいます。 江差の海苔加工は、この凝灰岩の欠片を取り除く作業にとても手間がかかります。 凝灰岩の欠片を取り除いた海苔を、包丁を使ってたたき細かくします。 細かくした海苔を水で溶き、木枠に流し込んで漉きます。 これは地域に対する愛着から出た言葉でしょうが、確かに香り高い「寒のり」には市販の海苔とは異なる独特の風味があります。 江差の海苔採りとその加工は、地域の消費者が食べ続けることによって守られている文化遺産のひとつでしょう。
by dounan-museum
| 2020-07-18 14:18
| コラムリレー
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