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市立函館博物館の保科です。 一昨年とある資料の登録を行いました。その中に、紙袋に通行手形と書かれた6枚の木札がありました。縦約90mm、横約60mm、厚約5mmほどで、両面に墨書があります。作成されたのは、記載内容から明治5年と思われます。 通行手形? 江戸時代には関所を通る際に通行手形を携行していないと通ることができません。江戸時代の通行手形は通常紙に書かれたものです。木札のような通行手形は、建物やある場所に入る際などに使われることはありますが、関所を通るために使われることは恐らくないと思われます。登録した資料のなかには別の通行手形もありました。(写真①)これも木札で紐が付いています。両面に墨書され、「海岸町 壱番組」「たきだし人足」と書かれています。この記載内容から、この木札はある場所に炊き出しのために行く際に使われたものと考えられます。 写真① 今回はこのコラムで、紹介ではなく照会しようかなと思っていましたが、正体が判明しましたので紹介させていただきます。 この資料は「氏子札」「守札」(国史大辞典では守札となっているがウィキペディアでは守礼となっている)というものでした。(写真②)私が突き止めたのではなく、当館で開催している古文書調査講座参加者の方が調べてくれました。『国史大辞典』であれば「氏子」、ウィキペディアであれば「氏子調」で検索すると出てきます。それらによると、この「氏子札」が発行されたのは明治4年から6年のわずか2年余りでした。発行にあたり「氏子調」(氏子改)が行われ、「氏子札」は身分証明書のようなものでした。「氏子札」に記載される内容は、表面に「所属している神社・生国・住所・姓名・生年月日・父親の名」、裏面に「神官の氏名と印・発給年月日」だったようで、当館の資料もほぼ同じ内容です。 江戸時代に村の古文書を調査していると、よく見かける資料があります。それは、検地帳・村明細帳・宗門人別帳です。検地帳は税金徴収のための土地台帳、村明細は村絵図などと合わせて村の状況を記載したもの、宗門人別帳は村人がどこの寺の檀家かということを記載したもので、戸籍台帳のようなものです。江戸時代には寺請制度があり、人々はどこかの寺の檀家に属することになっていました。江戸時代にはお寺(仏教)が支配装置の一躍を担っていました。 明治に入り、新政府は天皇制を中心とした中央集権の国家体制を築くにあたり、天皇制を補完する宗教政策として、江戸時代以来の仏教ではなく神道をその柱に据えました。そのため、檀家から氏子への鞍替えが必要になり、寺請に変わる「氏子調」が行われ、「氏子札」が発給されたようです。この木札は、支配体制が変わりその宗教政策も変化したことを示す「物的資料」として位置づけられると思います。 江戸から明治に変わり、廃仏毀釈などによって仏教から神道へ重きがおかれていったことは教科書などで習いましたが、「氏子調」が行われ「氏子札」が発給され、人々がどこかの神社の氏子とされていったことは全く知りませんでした。まだまだ知らないことばかり。木札と古文書調査講座参加者の方々のおかげで、新たな歴史を知ることができ、資料の価値も知ることができました。 写真② ①表「蒲原郡早道場町八幡宮氏子 生国越後田村専育女田村専順妻たせ 天保八丁酉年十二月十九日生」 裏「明治五壬申年正月 神職梶誉隆」
②表「福山天満神社氏子 渡島国津軽郡竜田治三郎長女奈津 文政十二 己卯六月十四日出生」 裏「明治五壬申正月 祠掌新田義明」 ③表「福山天満神社氏子 渡島国津軽郡柴田九十九長女けい 文久二壬 戌二月十三日出生」 裏「祠掌新田義明 明治五壬申正月」 ④表「福山天満神社氏子 渡島国津軽郡柴田浦太三男柴田矢太郎 文化 十二乙亥十二月十三日出生」 裏「祠掌新田義明 明治五壬申正月」 ⑤表「福山天満神社氏子 渡島国津軽郡島田奥五男柴田九十九 天保十 四癸卯正月三日出生」 裏「祠掌新田義明 明治五壬申正月」 ⑥表「福山天満神社氏子 渡島国津軽郡柴田矢太郎長女美津」 裏「祠 掌新田義明 明治五壬申正月」
by dounan-museum
| 2021-03-07 11:05
| コラムリレー
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