カテゴリ
全体 コラムリレー 市立函館博物館 函館市縄文文化交流センター 北海道立函館美術館 函館市北方民族資料館 函館市文学館 五稜郭タワー 函館高田屋嘉兵衛資料館 土方・啄木浪漫館 北海道坂本竜馬記念館 北斗市郷土資料館 松前町郷土資料館 松前藩屋敷 知内町郷土資料館 七飯町歴史館 森町教育委員会 八雲町郷土資料館 福島町教育委員会 江差町郷土資料館 上ノ国町教育委員会 厚沢部町郷土資料館 乙部町公民館郷土資料室 奥尻町教育委員会 大成郷土館 ピリカ旧石器文化館 テーマ「道南の考古学」 テーマ「道南の自然」 テーマ「道南の農業開発の歴史」 テーマ「松浦武四郎が見た江戸時代の道南」 テーマ「道南の美術を知る」 テーマ「幕末維新・箱館戦争」 テーマ「道南のアイヌ」 事務局 コラムリレー 未分類 お気に入りブログ
リンク
以前の記事
最新のコメント
最新のトラックバック
最新の記事
記事ランキング
画像一覧
|
市立函館博物館の大矢です。 現在市立函館博物館では,令和6年度企画展「北東アジアのシルクロード-北方交易と蝦夷錦-」を開催しています。 「シルクロード」といわれると,かつてヨーロッパと中国をつないだ絹製品の交易路が思い浮かぶかと思いますが,実は中国からサハリン・北海道を経て本州まで及んだ「北東アジアのシルクロード」も存在していたことをご存じでしょうか。中国の元朝・明朝・清朝は,ウリチやナーナイなど沿海州の先住民族を治めて朝貢交易をおこない,貴重なクロテンの毛皮等を納めさせる代わりに絹製の官服(役人の服)等を下賜しました。これが先住民族同士の交易を経て北海道にもたらされ,「蝦夷錦」として和人によって珍重されたのです。 蝦夷錦の中継役となったウリチやナーナイは,当時近隣の先住民族から「シャンタ」や「サンタ」などと呼ばれていたことから,やがてその呼び名は「サンタン(山丹)」に転訛し,この先住民族同士の交易活動は「サンタン交易」と呼ばれました。 市立函館博物館所蔵の蝦夷錦 1879年に函館の豪商杉浦嘉七が寄贈 19世紀初頭にアムール川河口付近の地デレンの「満州仮府」を訪れた間宮林蔵は,そこで行われていた朝貢交易の様子について『東韃地方紀行』に書き残しています。そこには毛皮を献じる先住民族や,下賜する反物を脇にしてそれを検分する清朝の役人の姿,そしてその周囲で活発に交易をおこなっている多数の先住民族の姿を見て取ることができます。 間宮林蔵『東韃地方紀行』(函館市中央図書館所蔵)より こうしてウリチやナーナイなどの先住民族の手に渡った絹製品は,サハリンの先住民族であるニヴフやウイルタ,そして同じくサハリンや北海道のアイヌへと渡っていき,「蝦夷錦」として和人の手に渡っていったのです。和人の手に渡った蝦夷錦はもとの服としての形態だけでなく,その素材や柄を活かして打敷や袈裟などの仏具や,袱紗や刀袋などの調度品にも仕立て直されるなど,さまざまな形態で現代まで伝わっています。 打敷に仕立て直された蝦夷錦(市立函館博物館所蔵) 裏面に「安政二卯年七月二九日」(1855年)の墨書がある 現在企画展では函館や松前などの道南地域に残された蝦夷錦を一堂に展示しているほか,サンタン交易の実態や蝦夷錦が和人に与えたイメージなどについて書かれた文書資料や絵画なども展示し,北東アジアのシルクロードの全体像が伝わるように展開しています。この機会にぜひ函館博物館に足を運んでいただき,貴重な文化財の数々をご覧いただきたいと思っています。 なお8月26日~28日は休館して,道南に残された蝦夷錦を青森県下北地方に残された蝦夷錦に展示替えし,8月29日からその公開を開始します。9月7日には学芸員による展示解説と,ノンフィクション作家相原秀起氏によるスペシャルトークを開催しますので,こちらもぜひご参加ください。
by dounan-museum
| 2024-08-30 13:29
| コラムリレー
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||