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今回は、旧石器文化館でも定期的に開催している石器づくりに関する話題です。 石の割り方 石器の材料となる石には、力を加えた場所から円錐形に決まった角度で割れていくという性質(割れ円錐の原理)があります。そのため、木を削るように自由に形を整えていくことはできません。 力を加える場所や角度、石を叩くハンマーの重さや材質を慎重に調整し、石の割れ方をコントロールしながら石器を作り上げていくのです。また、力の加え方にも種類があり、直接石を叩く直接打撃、鹿角などをタガネのように石に当てその上から叩く間接打撃、鹿角の先端を当て圧力で押し剥がしていく押圧剥離(おうあつはくり)などがあります。 押圧剥離 さて、前置きが長くなりましたが、今回はそんな石の割り方の中から押圧剥離に関するお話です。 押圧剥離は他の方法と比較すると狭い範囲しか剥がすことはできませんが、代わりに薄く剥離することができるため、細かな調整や細石刃など細長く薄い石器を生産するために使われていました。 この方法で製作される代表的な石器に縄文時代の石鏃(せきぞく)がありますが、こちらは石器全体をほぼ押圧剥離だけで仕上げていきます。叩くと割れてしまうような小さく薄い形状でも、押圧剥離であれば破損することなく加工できるため、この技術があったからこそ人類は石鏃という道具を生み出すことができたと言えます。 押圧剥離の再現実験で製作した石鏃 押圧剥離の実際 押圧剥離で使用するものは主に4つ、①素材②割れた破片から身を守るための皮③押し当てる鹿角④縁辺を調整するための丸石です。 押圧剥離の基本セット この中でも一番重要なものが、④の丸石になります。石には決まった角度で割れる法則がありますが、言い換えれば、力を加えた角度によって割れ方が変わってくるということでもあります。石器を石でこすり縁辺の角度を変え、力を加えたときに一番都合よく割れてくれる形状に調整しなければなりません。必要な角度が用意できれば、次はいよいよ押圧剥離に入っていきます。 押圧剥離の1例(1) 上の写真は、当館学芸員宮本の押圧剥離の様子です。膝の上に石器をやや立てて置き、押し当てた鹿角に体重を乗せながら剥がしていきます。 押圧剥離の1例(2) 皮の下には更に石を 一方、こちらは私のスタイルです。石器は手のひらに置き、指先と皮の下に仕込んだ平たい石で挟んでホールドしています。膝の上と比べて石器の角度を変えやすく、上半身の姿勢が安定するためこのスタイルを採用していますが、代償として指先にかなりの負担がかかります。皮の下に仕込んだ石は鹿角が手のひらに当たるのをガードするほか、石器を少し浮かせることで鹿角を当てやすくするために使っています。 石器づくり、それぞれのスタイル 人によって腕の位置や鹿角の当て方、道具の形状に至るまでそれぞれ異なり、同じ石器を同じ割り方で作る場合でも、実際は様々なスタイルが考案されています。石が割れること自体は物理現象であり、どんな力を加えたかを検証する方法が確立されていますが、石器をどう持ったか、どんな姿勢で作っていたかまではわかりません。そのため、様々な方法で再現した石器と実際の石器とを見比べ、どんな方法だと上手く再現できるかの模索がおこなわれています。また、金属製の軸先を使用した現代的な押圧剥離を考案する人もいて、学術研究にとどまらない趣味としての石器づくりも盛んです。 石器づくりは非常に奥が深く、自分ならこの石器をどう作るだろうか?と考えることで石器時代の人間と同じ目線で石を眺めることができます。みなさんもぜひ石器づくりに挑戦し、石器時代の目線を獲得してみてください。
by dounan-museum
| 2024-09-04 10:05
| コラムリレー
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