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北海道立函館美術館の高橋です。現在、当館では「文字の芸術をめぐる旅―文字ってアートなの?」を開催しています。 北海道立函館美術館は、コレクション収集にあたって、<道南ゆかりの美術><書と東洋美術><文字・記号にかかわる美術>という三つの柱を掲げています。その中でも、「書」は、松前町出身で戦後の日本の書道界を代表する書家の一人で、近代詩文書の提唱者でもある金子鷗亭氏が自身の作品を数多く当館に寄贈してくださったことから、美術館としてはめずらしく、「書」のコレクションが充実しています。そして「書」から発展した<文字・記号にかかわる美術>も、国内外の現代美術の名だたるアーティストの作品がそろい、その高い国際性と現代性は、見ごたえのあるものばかりです。 本展は、当館コレクションの文字に関わる作品に焦点を当て、「アートのなかの文字」「印刷される文字」「文字のチカラ」「アートになった文字」「痛みをはらむ文字」「とおくてちかい文字」「形をうしなっていく文字」という七つのテーマを設けて、各テーマがゆるやかに繋がるように構成しています。旅をするように文字を使った作品を巡りながら、アートとしての文字の面白さや魅力を感じていただける内容です。このコラムリレーでは、展示作品をいくつかご紹介します。 ![]() 展覧会の最初に目に入るのは、本展のメインビジュアルにも使用している岡田博《RED》です。この作品は「RED(赤)」と描いていますが、背景が「緑」、文字が「白」で描かれており、作品の中にはどこにも「赤」がありません。この作品は、文字情報と視覚情報のズレをあえて意識させ、文字がもつ意味が失われ、単なる記号になることをあらわしています。このように、文字を使ったアートには、作家が作品を通して鑑賞者である私たちに「問いかけ」をするような作品がたくさんあります。なかには、意図的に「違和感」を起こすような作品もあります。私たちは作品について「考えること」を求められるようになってきました。 ![]() 次にご紹介するのは、三島喜美代《NEWS PAPER F-87》です。三島は、1970年代から新聞や雑誌などの印刷物をシルクスクリーン技法でやきものに転写する表現に取り組みました。本作は、新聞紙を陶器という割れやすい素材でかたどっています。そのサイズは巨大で、形がくしゃくしゃにつぶれており、異様な存在感を出しています。巨大な新聞紙の塊には、社会に大量にあふれる一過性の情報に対する、作家の不安感や危機感があらわされています。 ![]() 現代書のパイオニアの一人で、時代をリードしつづけた書家・金子鷗亭(1906-2001)は、「近代詩文書」を提唱しました。近代詩文書は、現代を生きる私たちにとって身近な言葉や近代文学を題材とし、漢字と仮名を交えて書かれています。書家が言葉のイメージをふくらませ、文字を視覚的に訴えかけるように表現していることも特徴です。《山村暮鳥詩 風景 純銀もざいく》は、漢字と仮名交じりの書を提唱した鷗亭には珍しく、ひらがなだけの詩を扱った作品。全体的に薄い墨を用いているため、その濃淡の変化がわかりやすく、墨がたくさんのっている箇所、かすれていく過程がよくわかります。全体的に濃淡のグラデーションを作り出して、風に波打つ一面の花畑の様子を思わせます。 ![]() 金子鷗亭《山村暮鳥詩 風景 純銀もざいく》1958(昭和33)年 函館市蔵(当館寄託)
そのほかにも、2021年に逝去した函館出身の画家・外山欽平《アルファベットシリーズ》を七点お借りして展示しており、鮮やかな色彩は展示室内でひときわ目を惹きます。また、特別展ということで、普段は展示されないような大型の作品も数多く展示しています。約十年ぶりに展示する石飛博光の全長七メールを超える屏風作品《桑田佳祐詩 TSUNAMI》や金子鷗亭《宮沢賢治詩 雨ニモマケズ》、ひらがなにちなんだ五十センチ四方の五十一個の箱が並んでいる平林薫《五十一音一箱》など、どれも見ごたえがあります。
常設展示室では、港町函館のイメージを彷彿とする作品を紹介する「港町函館 今・昔」、鷗亭記念室では、海にまつわる言葉と題材とした書の作品を集めた「海を書く」を同時開催しています。いずれも会期は4月6日(日)まで。ぜひ、函館美術館にお越しください。
by dounan-museum
| 2025-01-11 11:08
| コラムリレー
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